しろくろファームの馬糞堆肥

しろくろファームでは堆肥の中でも土壌改善に良いといわれる馬糞堆肥を、ポニーのシロとクロの馬糞を堆肥化させることで自家生産しています。

このページでは馬糞堆肥について、また、ボロ(馬糞)を堆肥にするまでの過程を紹介します。

肥料堆肥の違い

まずは一般的なお話です。肥料堆肥について説明します。
シンプルな理解の仕方としては、肥料は植物を育て、堆肥は土を育てるものになります。
(深堀りすると違いが分からなくなってくるのですが、ここではこれを土台にして話します)

植物が育つ時に必要な栄養を直接的に供給するものが肥料であり、これに対し、土に混ぜて微生物に分解させることで最終的に植物の栄養となるものが堆肥です。農家さんはこの肥料と堆肥をタイミングよく、またバランスよく使用して土壌と作物の栄養を管理しています。

これだけを聞くと、「肥料だけを与えていれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。作物を健康的に育てるには栄養だけでなく、土壌の水はけであったり、病気対策であったり、風などの自然対策などいろいろな要素を考えなくてはなりません。

例えば少し雨が降ったくらいで水たまりができてしまう畑は周りにありませんか?その畑は排水性が悪い・・言い方を変えると硬い土壌であり、もちろんそれに適する作物もあるでしょうけど、農業全般的にはそういう土壌では作物は根が成長するのを妨げられてしまいます。また通気性も悪いため根が呼吸をできず、それが根腐れの原因にもなってしまいます。
他にも、連作障害という言葉を聞いたことはあるでしょうか?同じ作物を同じ場所で連続で作っていると、土壌の成分が偏ってしまい、病害虫が発生して作物が作れなくなってしまう現象です。

こういった対策として根本的な改善を図るには、土の中の微生物を活発に活動させ、増やすことです。これを解決してくれるのが堆肥です。
様々な微生物が分解を繰り返すことで土がフカフカになりさらには偏っていた土壌成分も改善され、病害虫の発生を抑制するという結果になります。従って、作物を長期的に作っていく上では肥料だけを与えるのではなく、土壌の改善も同時に考えていく必要があるため、堆肥の存在も必ず必要になります。

堆肥の種類

肥料堆肥にはさまざまな種類があります。
堆肥としてよく知られているのは、牛糞堆肥・豚糞堆肥・鶏糞堆肥ですね。
馬糞堆肥は、それらに比べるとあまり目にする機会がないかもしれません。

しろくろファームでは、飼っているポニーたちのボロ(馬糞)を堆肥として利用しています。「量が少ないのでは?」と感じる方もいると思いますが、実際にはポニー2頭で、1日に一輪車いっぱい山盛りのボロが出ます。

さて、ここまで挙げた堆肥を「土壌改良材」としての性能で見ると、一般的に次のような順になることが知られています。

馬糞堆肥>牛糞堆肥>豚糞堆肥>鶏糞堆肥

AIで作成したイラストですが、あくまで【土壌改良剤として】という点にご注意ください(^-^;誤解なきよう

もし馬に関わる方がいらっしゃいましたら、
ぜひここに注目していただきたいです🐴!
そうなんです。馬糞堆肥はなかなかホームセンターではお目にかかれませんが、
土壌改良剤としての質は非常に優秀です。

ただし――いいことづくめの“万能資材”というわけではありません。
使い方を間違えると、大きな失敗や被害につながる可能性も持っています。
だからこそ、馬糞を使う際には、その特性を正しく理解することがとても大切です。
失敗せずに、馬糞をきちんと「堆肥」として使いこなすために
この先で詳しく説明していきたいと思います。

馬糞堆肥の正しい理解と使い方

馬糞は「そのまま撒けば肥料になる」は誤解です!

馬と農業の世界にいると、たまに「馬糞はそのまま土に混ぜれば、すぐ肥料になる」と聞くことがありますが、これはあまりおすすめできません。
おそらく、
馬糞は有機物が多く、分解されやすい
馬糞堆肥はとても優秀
この2つの話が混同されているのだと思います。

馬糞が「分解されやすい」と言われる理由

馬に関わる方なら、ボロ(馬糞)を積んでおくと山から湯気が立ち上る光景を思い浮かべられるでしょう。
あの湯気は、有機物を分解する微生物が発酵の際に出す熱によるものです。
馬は牛とは消化の仕組みが大きく異なり、有機物をあまり分解しないまま排出します。
そのため馬糞には植物性有機物が多く含まれ、発酵促進剤などを加えなくても自然に発酵が進みます。
これが “馬糞は分解されやすい” と言われる理由です。

馬糞堆肥が優秀な理由

馬糞が堆肥として非常に優れているのは、
しっかり発酵を終えた馬糞堆肥には、土中微生物のエサになる有機物が豊富に残っているからです。
微生物がそれらの有機物を分解することで、植物が吸収できる養分=肥料が生まれます。
つまり、馬糞堆肥は
即効性の肥料ではない
土壌改良にとても向いた堆肥

という位置づけになります。

正しい理解をまとめると・・・

誤解されやすい点を整理すると、次のように考えると分かりやすいと思います。
ボロ(馬糞)は、3か月以上寝かせるだけで優秀な堆肥に変わる
馬糞堆肥自体の栄養分は多くないが、土に混ぜて1か月ほど寝かせると、非常に良い土ができる
このような理解でよいと思います。

生の馬糞をそのまま使うと起こる問題

馬糞の特性を知らずに、ボロをそのまま大量に土に混ぜてしまうと、次のような問題が起こります。
・微生物が有機物を分解するために土の中の窒素を大量に消費してしまう
・その結果、作物が必要とする窒素が不足する(窒素飢餓)
・地中で分解が進む際に出るガスが溜まり、根の生育を阻害する可能性がある
・ボロに集まる蠅などの虫が、病気を運んでくるリスクがある
つまり、「分解されやすい」という長所が、ここでは裏目に出てしまうのです。

例外と注意点

・少量のボロを撒いた程度
・しばらく作付けしない休耕地
このような条件であれば、ゆっくり分解が進むため大きな問題にはなりにくいと思います。
以上のことから、筆者がよく聞く、馬ふん堆肥の失敗例のほとんどは
乗馬施設から大量のボロをもらい、畑に撒いてすぐ作物を植え、『馬糞を使ったら作物が育たなかった』
という事例ではないかな、と思います。

まとめ

馬糞堆肥を使う際は、

  • 馬糞の役割を正しく理解すること
  • しっかり発酵が進んだ堆肥を使うこと
  • 適切なタイミングで、適量を施すこと

これらを守ることで、馬糞堆肥は非常に心強い土づくりの味方になります。

【余談】馬の消化の特性と、疝痛(せんつう)との関係

前述の通り、馬糞は土壌改良材として特質しているわけですが、馬が牛と比べて糞に多くの有機物を残すのは、実は馬には疝痛(せんつう)が多いこととも深く関係しています。
牛は反芻はんすう動物で、胃の中(前胃)で時間をかけて発酵・分解を行います。一方、馬は胃が小さく、食べたものを比較的速いスピードで腸へ送り、盲腸や結腸けっちょうで後から発酵させる「後腸発酵こうちょうはっこうの仕組みを持っています。
この構造のため、馬は繊維質を完全に分解しきれないまま排出することが多く、糞の中に植物性有機物が多く残ります。これが「堆肥としては馬糞は分解されやすい」部分とリンクしています。
同時に、この未分解の有機物が腸内で急激に発酵しやすいという特性は、ガスの発生や内容物の停滞を引き起こしやすく、疝痛の原因にもなります。
つまり、馬は「発酵に頼った消化」をしながらも、その発酵を安定してコントロールするのが得意ではないんです。
このような馬の消化の特性が、そのまま馬糞の性質にも表れており、体内では疝痛のリスクとなり、体外では発酵しやすい堆肥原料としての性質につながっています。

④参考:馬ふん堆肥はバラ栽培に良い土改良材

しろくろファームでは薔薇は栽培していませんが、しろくろを連れてお出かけをして歩いていると、薔薇を栽培している方から馬糞をくださいと声をかけられたことがまあまああります。なんでも海外では薔薇の栽培に馬糞堆肥は付き物なんだとのこと。

理由としては、上記に挙げた通り微生物が増えることで病気に強くなるという点、また、害虫として知られるコガネムシを寄せ付けない効果があるということです。これは、馬の寝床である 馬房 ばぼう敷料 しきりょう に、ひのき入りのおが粉を使用している乗馬施設から出る馬糞堆肥の特製で、檜にはコガネムシを寄せ付けない成分が含まれているためそのような特製がでるのだそうです。
もし薔薇用の馬糞堆肥を謳う商品を見かけたら、成分表にヒノキが入っているか見てみてください。馬の敷料は乗馬施設によって全く違うため、なかなか見かけることはないかもしれません。(インターネット販売ならすぐ見つかると思います)

【記事を修正しました-2026年1月22日-】
上記記事について、その後いろいろな記事を参考にさせていただく中で、檜の成分が害虫の忌避剤になるという部分については修正したいと思います。完全な間違いとまではいきませんが、ヒノキチオール」という精油成分が害虫に対して忌避効果をもたらすことは確認されているようなのですが、どうやら日本の檜にはその成分はほとんど含まれていないのだそうです。代わりに「α-ピネン」という成分が多少の忌避効果を生むそうです…、あくまで「気休め程度」なんだそうです。

とはいえ、海外の薔薇栽培において馬ふん堆肥が“付き物”のように扱われているのは事実で、そこには、乗馬や競馬など馬文化が今なお根強く残っている背景に加え、短期的な肥料効果よりも土壌の持続性や健全な根張りを重視する栽培思想があるようです。

馬糞堆肥を作ろう

それでは馬糞堆肥を作る工程を紹介したいと思います。ちなみに敷料は籾殻です。

そのまま放置しても自然と発酵が進む馬糞ですが、微生物が餌としてとても喜ぶ米ぬかを混ぜて山にしてあげてください。葉っぱを混ぜるとさらに数段速く発酵が進みます。かさ増しにもなるためお勧めです。

また、発酵には水分がとても大切なので、表面が乾かないようにカバーをかけたり全体的にいき渡らせるために定期的に混ぜてください。カバーをかけるのは雨などで発酵温度が下がるのを防ぐためでもあります。温度が高くなることで悪い菌を死滅させることができるのでとても大事な要素になります。

 

敷料におが粉を使用していれば米ぬかを混ぜることで4か月程度で済みますが、稲ワラは半年はかかると思います。ただし、ゆっくり分解されるワラの方が土壌作りとしては良質になります。

家庭菜園向けにスコップを使って馬糞堆肥作りを動画にしてみました。よろしければ参考にしていただければと思います。

しろくろファームでは少なくとも3か月以上は経過して堆肥化された状態馬糞堆肥を、そして作物の苗を畑に植える一ヶ月以上前に畑に捲くことで肥沃な土壌を準備し作物を育てています。

(米ぬかのことを “ 籾殻もみがら ” と言っていたり、誤記だらけです( ;∀;) あとで作り直します・・・ゴメンナサイ)

⑥馬乗りにとって馬糞とは・・・

20年以上、馬に関わってきた筆者の実感として、馬に携わる人にとってボロ(馬糞)の処理は意外と悩みであるケースは少なくありません。おそらく大抵の乗馬クラブや大学の馬術部さんに「馬糞いただけませんか?」と声をかけると「ぜひ!いくらでも持っていってください!」と喜んでくれるのではないでしょうか?
もちろん、あまりに問い合わせが集中してしまうとご迷惑をかけるかもしれませんので、その点はご配慮ください。ただ、なかには「馬糞がそんなに価値のあるものだったなんて・・」と驚かれる方もいるかもしれません。
だからこそ、ひと声かけてみる価値はあると感じています。

馬糞は適切に堆肥化することで、農地にとって非常に有益なものになります。
農家にとっても、馬に関わる人にとっても、馬糞堆肥の活用はお互いにとってプラスになる関係を築くことができるのです。

この文章がきっかけとなり、馬糞堆肥の価値がもっと広く知られ、多くの人がその恩恵を受けられるようになることを願っています。