しろくろファームでは堆肥の中でも土壌改善に良いといわれる馬糞堆肥を、ポニーのシロとクロの馬糞を堆肥化させることで自家生産しています。
このページでは馬糞堆肥について、また、ボロ(馬糞)を堆肥にするまでの過程を紹介します。
①肥料と堆肥の違い
まずは一般的なお話です。肥料と堆肥について説明します。
シンプルな理解の仕方としては、肥料は植物を育て、堆肥は土を育てるものになります。
(深堀りすると違いが分からなくなってくるのですが、ここではこれを土台にして話します)
植物が育つ時に必要な栄養を直接的に供給するものが肥料であり、これに対し、土に混ぜて微生物に分解させることで最終的に植物の栄養となるものが堆肥です。農家さんはこの肥料と堆肥をタイミングよく、またバランスよく使用して土壌と作物の栄養を管理しています。
これだけを聞くと、「肥料だけを与えていれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。作物を健康的に育てるには栄養だけでなく、土壌の水はけであったり、病気対策であったり、風などの自然対策などいろいろな要素を考えなくてはなりません。
例えば少し雨が降ったくらいで水たまりができてしまう畑は周りにありませんか?その畑は排水性が悪い・・言い方を変えると硬い土壌であり、もちろんそれに適する作物もあるでしょうけど、農業全般的にはそういう土壌では作物は根が成長するのを妨げられてしまいます。また通気性も悪いため根が呼吸をできず、それが根腐れの原因にもなってしまいます。
他にも、連作障害という言葉を聞いたことはあるでしょうか?同じ作物を同じ場所で連続で作っていると、土壌の成分が偏ってしまい、病害虫が発生して作物が作れなくなってしまう現象です。
こういった対策として根本的な改善を図るには、土の中の微生物を活発に活動させ、増やすことです。これを解決してくれるのが堆肥です。
様々な微生物が分解を繰り返すことで土がフカフカになり、さらには偏っていた土壌成分も改善され、病害虫の発生を抑制するという結果になります。従って、作物を長期的に作っていく上では肥料だけを与えるのではなく、土壌の改善も同時に考えていく必要があるため、堆肥の存在も必ず必要になります。
②堆肥の種類
肥料も堆肥もそれぞれ様々な種類があります。堆肥として有名なのは牛糞や豚糞、鶏糞堆肥ですね。馬糞堆肥はどちらかというと目にすることはあまりないかもしれませんが、しろくろファームではポニー達のボロ(馬糞)を堆肥として利用しています。「少ないのでは?」と感じる方もいると思いますが、2頭で1日に一輪車が盛り盛りいっぱいの量は出るので、分解されて嵩が減ることも考慮すると3,4日毎にホームセンターで販売されている20ℓの馬糞堆肥が1袋出来上がるといったところでしょうか。(正確ではないかもしれません、ぜひ検証してみたいです)
さて、上記で挙げた様々な堆肥ですが、細かい話は別の機会にし、土壌改良材としては
馬糞 > 牛糞 > 豚糞 > 鶏糞
であることが知られています。
馬関係者の方がもしいましたら、ここ↑に注目して頂きたいです( `ー´)ノ キリ
そうなんです、馬糞はなかなかホームセンターでもお目にかかれないものではありますが、堆肥としてはとても優秀なものになります。
ただし!
実際に馬糞堆肥を使ってみようと思っていただける方がいるかもしれないため、よく聞く話を一例として挙げておきます。
③馬糞堆肥のチカラ
それは「馬糞はそのまま土に混ぜればすぐ肥料になる」と言って、そのまま畑に撒いている話を聞きますが、それはあまりお勧めしません。
おそらくそれは「馬糞は有機物が多いから分解されやすい」ことと「馬糞は堆肥として優秀」である話とを混同されているのかなと思います。
馬に携わる方ならボロの山から湯気が上っている様子は容易に想像できますよね。 あの湯気は有機物を分解するときに微生物が発酵熱を放出するために出るものです。馬は牛と比べて消化吸収の仕組みが大きく違い、有機物がほとんど分解されずに外に排出されます。そのため、有機物を多く含む馬糞は発酵促進剤のようなものがなくても自然と発酵が進んでいきます。これが “馬糞は分解されやすい” と言われる理由です。
また、馬糞が堆肥として非常に優秀であるのは、発酵をしっかり終えてできた馬糞堆肥には土の中の微生物がえさとする植物性有機物が他の堆肥に比べて豊富に含まれているからです。微生物がこの有機物を分解することで植物に吸収される養分=肥料となります。ゆえに馬糞堆肥は堆肥として非常に良質で、土壌改良にとても向いています。
つまり、誤解されていることを整理して端的に表現すると、
”ボロ(馬糞)は3ヶ月以上寝かせるだけで優秀な堆肥になる”
そして、
”馬糞堆肥自体に栄養はほとんどない。けれど土に混ぜて1ヶ月程度寝かせると、とても良い土ができあがる”
このような理解でよいと思います。
こういった点を誤解して、例えばボロを直接土に混ぜてしまうと、土に含まれる窒素を 有機物を分解するためだけに使って しまい、作物が育つために必要な窒素を奪ってしまうことになります。つまり微生物が分解しやすい特性が裏目に出てしまいます。また、地中で分解した際に出るガスが溜まってしまうと、植物の生育を阻害する役割をしてしまうことが考えられます。もっと分かりやすい点では、ボロには蠅などの虫がたかりますが、蠅が植物に止まることでいろんな病気を持ってくることなどが考えられますね。
少量のボロを撒いた程度や、一定期間休ませている休耕地ならさほど影響を受けずにゆっくり分解されていくので問題ありませんが、もらってきたボロをたくさん畑に撒いてそのまま作物を作ってしまい、「馬糞を使ったら作物が育たなかった」という悲しい話を聞くことがあります。馬糞堆肥を使うにあたっては、役割を理解して、適度なタイミングに適度な量を、そしてしっかり発酵が進んだ堆肥を使うことをお勧めします。
④参考:馬糞堆肥は薔薇の栽培に効果的と聞きます
しろくろファームでは薔薇は栽培していませんが、しろくろを連れてお出かけをして歩いていると、薔薇を栽培している方から馬糞をくださいと声をかけられたことがあります。なんでも海外では薔薇の栽培に馬糞堆肥は付き物なんだとのこと。
理由としては、上記に挙げた通り微生物が増えることで病気に強くなるという点、また、害虫として知られるコガネムシを寄せ付けない効果があるということです。これは、馬の寝床である 馬房 の 敷料 に、檜入りのおが粉を使用している乗馬施設から出る馬糞堆肥の特製で、檜にはコガネムシを寄せ付けない成分が含まれているためそのような特製がでるのだそうです。
もし薔薇用の馬糞堆肥を謳う商品を見かけたら、成分表にヒノキが入っているか見てみてください。馬の敷料は乗馬施設によって全く違うため、なかなか見かけることはないかもしれません。(インターネット販売ならすぐ見つかると思います)
⑤馬糞堆肥を作ろう
それでは馬糞堆肥を作る工程を紹介したいと思います。ちなみに敷料は籾殻です。



そのまま放置しても自然と発酵が進む馬糞ですが、微生物が餌としてとても喜ぶ米ぬかを混ぜて山にしてあげてください。葉っぱを混ぜるとさらに数段速く発酵が進みます。かさ増しにもなるためお勧めです。

また、発酵には水分がとても大切なので、表面が乾かないようにカバーをかけたり全体的にいき渡らせるために定期的に混ぜてください。カバーをかけるのは雨などで発酵温度が下がるのを防ぐためでもあります。温度が高くなることで悪い菌を死滅させることができるのでとても大事な要素になります。

敷料におが粉を使用していれば米ぬかを混ぜることで4か月程度で済みますが、稲ワラは半年はかかると思います。ただし、ゆっくり分解されるワラの方が土壌作りとしては良質になります。
家庭菜園向けにスコップを使って馬糞堆肥作りを動画にしてみました。よろしければ参考にしていただければと思います。
しろくろファームでは少なくとも3か月以上は経過して堆肥化された状態の馬糞堆肥を、そして作物の苗を畑に植える一ヶ月以上前に畑に捲くことで、肥沃な土壌を準備し作物を育てています。
(米ぬかのことを “ 籾殻 ” と言っていたり、誤記だらけです( ;∀;) あとで作り直します・・・ゴメンナサイ)
⑥馬乗りにとって馬糞とは・・・
20年以上、馬に関わってきた中の人(筆者)の実感として、馬に携わる人にとってボロ(馬糞)の処理は意外と悩みであるケースは少なくありません。おそらく大抵の乗馬クラブや大学の馬術部さんに「馬糞いただけませんか?」と声をかけると「ぜひ!いくらでも持っていってください!」と喜んでくれるのではないでしょうか?
もちろん、あまりに問い合わせが集中してしまうとご迷惑をかけるかもしれませんので、その点はご配慮ください。ただ、なかには「馬糞がそんなに価値のあるものだったなんて・・」と驚かれる方もいるかもしれません。
だからこそ、ひと声かけてみる価値はあると感じています。
馬糞は適切に堆肥化することで、農地にとって非常に有益なものになります。
農家にとっても、馬に関わる人にとっても、馬糞堆肥の活用はお互いにとってプラスになる関係を築くことができるのです。
この文章がきっかけとなり、馬糞堆肥の価値がもっと広く知られ、多くの人がその恩恵を受けられるようになることを願っています。